感想&考察『ドクター・スリープ(2019)』が描くダニーのトラウマとその後、そして超能力大戦へ
スティーブン・キング原作の『シャイニング』の続編『ドクター・スリープ』を観てきました。
- 映画『ドクター・スリープ』のあらすじ(途中まで)
- 正直『シャイニング』とは違うテイストだが...最高!
- 気になったところ
- 前作へのリスペクトも結構スゴいなって話
- 本題、トラウマと人はどうやって付き合うべきか?
- シャイニングが描かれる映画は他にもある?
前日に『シャイニング』見直しといて良かった~
今回は確実に『シャイニング』を観るもしくは原作を読むかしてから鑑賞するのがオススメです。
映画『ドクター・スリープ』のあらすじ(途中まで)
一応あらすじからご紹介。
コチラから感想に移動できます。
今回もネタバレ基本アリです!あと『シャイニング』にも触れると思うので注意
1980年、世間では謎の児童誘拐事件が相次いでいた。その頃『シャイニング』(以下、前作)での一件で父親ジャックを失ったダニーは母、ウェンディと新らしい生活を始める。しかし「ホテル」での凄惨な記憶はダニーを苦しめ続け、「悪の存在」(お風呂のオバちゃんや双子、バーテンダーなどなど)も彼にまとわりついてしまっていた。前作で登場した料理人でシャイニング使いのハロランさんは霊体(?)となって彼に「悪の存在」を自分の頭の中に閉じ込めて邪魔(まさに邪悪な魔物)をさせない方法を伝授する。こうしてダニーは「悪の存在」と無縁な生活を送るのでした。めでたしめでたし(で終わるはずもなく)。
時は流れて2011年、ダニーは酒に、喧嘩に、女に、ドラッグに明け暮れる毎日。ハロランさんに諭されて、父親と自分の姿を重ねたダニーはついに一念発起、新しい街に移り住むと禁酒セミナーに通いながら終末医療の現場に自分のシャイニングを使い患者のケア行うことを使命とし自分自身も更生することに成功。そんな中、一際強いシャイニングを持つ少女アブラ(今気づいたけどカタカナで書くとなんかラーメン二郎っぽい)とシャイニングで交信しはじめる。
またまた月日は流れ2019年、もう立派な医療人となったダニー。ある日彼はアブラから発せられる強烈なシャイニングを受信。アブラは誘拐された野球少年のSOSシャイニングを受け取り、ダニーにそれを知らせたのであった。ハロランさんの「アブラを助けることで俺への恩を返せ」というラストメッセージを受け戦うことを決めたダニー。てなワケで実はシャイニングを持つ子供を誘拐し殺し生気を吸い取って延命していたスゴ腕スパイのイルサ・ファウスト率いるサイキック・ヴァンパイア軍団との超能力大戦が始まるのであった。(最後なんか違くない?)
正直『シャイニング』とは違うテイストだが...最高!
『シャイニング』っていう映画自体が原作者のキングと監督のキューブリックの間で揉めに揉めた作品です。
なので原作と映画のどっちを基準にするかで続編の『ドクター・スリープ』の描き方が全く変わってしまうのではないか?と思っておりました。
ちなみに私はキングの作品の中にある「やさしさ」も好きですが、キューブリックの「スタイリッシュさ」も好きです。どっちつかずですね...
しかし鑑賞中その不安は吹っ飛びました!
町山智宏さんが言ってましたが「キューブリックという父」と「キングという母」の間に生まれたのがまさに『ドクター・スリープ』だと思います。
キングらしさが加わったことにより前作とは雰囲気が異なるものになってしまったのも事実ですが確かにキューブリックの作り上げたデザインがその中で生きている。
これが40年かかって出た満点に近い解答じゃないでしょうか?
気になったところ
しかしキング要素が強まったことによって「何故?、Why?」が増えてしまったのは紛れもない事実。
前作は超常的一線を越えるor越えないの程よい場所で作品は展開されたので現実でも起こりうる(アルコール依存症やDVに対しての)恐怖を描いていたので身近に感じます。
今回は「超能力大戦映画」と言っても差し支えないほど超常的一線をハッキリ越えているので理屈が理解しづらい部分も多かったと思います。
超常的と言えばローズ・ザ・ハットがアメリカの夜空を空中高速移動するシーン(実際は頭の中で起こっているんですけど)ではスーパーマンとかアイアンマンを重ねてしまいました。(笑)!
あと単純に疑問に思ったのが銃撃戦のシーンで敵が倍ぐらいいたのにバンバン倒されていくのが不思議でした。物理攻撃には弱いのでしょうか?
前作へのリスペクトも結構スゴいなって話
主人公の父親ジャックと母親ウェンディを演じている方が本当にジャック・ニコルソンとシェリー・デュヴァルにそっくりだったのでビビりました(強いて言えばジャックは横顔だけのほうが良かったような気もします)。
そうそう『シャイニング』と言えばお風呂のオバさん。彼女とは昨年の『レディ・プレイヤー1』にてMX4Dで再会しましたが、やはり本家本元の『ドクター・スリープ』は気味の悪さが違います。
でも美女から変化しないと意味がないと思うのは私だけでしょうか?
本題、トラウマと人はどうやって付き合うべきか?
本作品のたぶん最重要テーマがトラウマと抑圧だと思います。
抑圧とは
精神分析で、自我の安定をおびやかす不快な観念や衝動を無意識のうちにおさえつけて、意識にのぼらないようにすること。また、その精神作用。
明鏡国語辞典 第二版
霊体になったハロランさんがダニーに伝授した「魔法の箱」。
無意識の領域にある箱に全て怖いものは入れておいて鍵をかけておこう
これは別にシャイニングが使えない私たちも普段意識せずにやっていることです。
キングの作品はこの「抑圧」がテーマである場合が本当に多いです。『IT(イット)』で登場した子供たちも大人になると「それ」のことは忘れているのです。マイクに呼び戻されてやっと思い出すのです。
- 作者:スティーヴン・キング
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/10/03
- メディア: Kindle版
さて抑圧した記憶はどこにむかうのでしょうか?ハロランさんが言っていたように消えてなくなるわけではありません。
この分野の始祖のジグムント・フロイトによると「普段は無意識の場所に存在するが、何かの拍子に意識される場合がある」とのこと。
これにより人は鬱やノイローゼ状態に陥ってしまうのです。
ずっと閉じ込めておくことはできない
我々はいつかは立ち向かわねばならないのです。
ダニーは40年ぶりに箱をあけることになりました。
過去の自分、父、ホテルと向き合うことで彼はアブラが言うようにホテルと共に浄化されたのでしょう。
シャイニングが描かれる映画は他にもある?
私のイチオシは『アトランティスのこころ』と『グリーンマイル』!
両作品とも「良いシャイニング使い」が出てくる作品です。あと心が温まる作品なんでホラーでガクブルした後に鑑賞してみてはどうでしょうか?
それではまた次の記事でお目にかかりましょう!
オマケ(書き足りないこと)
- 可哀想な野球少年を演じるジェイコブ・トレンブレイ君、『ルーム』の時よりかなり大人っぽくなったなぁ~
- 敵チームの長老が死んだ後の彼らの反応が個人的に一番トリハダモノでした(汗)!
- スネークバイト役の子、ヘレナ・ボナム・カーターかと思った(ググったらそこまで似てなかったです)
以上です!
キングにハマッたらこちらもオススメ
yamaichi-no-yougabiiki.hatenablog.com