ロシア鉄道横断紀行③ウラジオストク~シベリア鉄道の東の端~編
さて、ロシア鉄道横断紀行の第三回目です。極東のサンフランシスコことウラジオストクについて私の体験を交えながら綴って行こうと思います。
ロシア紀行シリーズ
ロシア鉄道横断紀行①計画と手引き編
↑加筆・修正中です、ご迷惑おかけします!
ロシア鉄道横断紀行②準備と出発編
↑加筆・修正中です、ご迷惑おかけします!
- 意外と近い?ウラジオストクへのアクセス
- 駅からのアクセス抜群!「ホテル・プリモーリエ」
- 【厳選】ウラジオストク観光スポット
- 【旅の食】ロシア料理店「ノスタルギーヤ(Ностальгия)」
- 現地ですべきシベリア鉄道の準備
- 私的ウラジオストク総評
- 次回予告
意外と近い?ウラジオストクへのアクセス
成田ーウラジオストクは直行便を利用しておよそ二時間半で結ばれています。これは羽田ー那覇の所要時間に相当します(ウラジオストクと沖縄は要素としては対になる関係ですが)。
遠く思えるヨーロッパ風文化は意外と近くに存在しているのです。今回はS7航空でウラジオストクに向かいました。
ちなみに海路も存在していてその場合は途中、韓国の東海港を経由します。詳しくはフェリーに関する鳥取県の公式サイトを参考にしてみてください。
ロシアのLCC?準メインエアライン?S7航空とは
S7航空は、ロシア連邦の格安航空会社(LCC)である。首都モスクワやノヴォシビルスク、イルクーツクを主な拠点とする。ロシア国内線では最大のシェアを占める。
上記はWikipediaの記事「S7航空」より引用
「ロシアの格安航空会社」なんて書いてあるとなんとなぁ~く嫌な予感がする人も多いのでは? 全く気にしない方もいると思いますが、不安になる人がいても不思議ではないと思います。
ということでウラジオストクのレポートの前に少しS7航空について触れておきましょう。
S7航空は基本的に成田から就航中!!!
過去には関西国際空港~ウラジオストクや成田~イルクーツク(不定期?)という路線があったのですが、現在は成田⇔ウラジオストクと成田⇔ハバロフスクのみ運航中。
あと日本航空の機体を使ったコードシェアだと成田⇔モスクワ等のメジャー路線も存在します。
最近便数が多くなってきていてウラジオストクには週5往復、ハバロフスクには週3往復しています(2019年1月末確認)。
成田でのS7航空のチェックイン場所は第2ターミナル 、3階 、Rカウンターです!!!
上の図は「航空会社案内:S7航空」by成田空港サイトより引用
成田の第二ターミナルは第一と比べればシンプルな構造なので迷うことはないと思います。
ちょっとした難点はRカウンターの位置です。端っこなので入り口によってはかなり歩くと思います。
第二ターミナルに入ったらひたすら右に向かってください。エントランス側(道路側)を右手にまっすぐ進みます。
荷物、重くないですか?~重量制限のはなし~
S7航空を利用するときの注意すべき点は重量制限についてです。具体的に言うと
- ホームページ上での預け入れ荷物の重量制限は、通常と同じ23kg(50ポンド)となっているが私が利用した成田ーウラジオストク便では20kgとなっていたので注意
- 手荷物(機内持ち込み荷物)については、10kgまでで結構シビアに重さを量られる→持ち込み可能な手荷物にはタグをつけられる
※上で記述した注意点は私がS7航空を利用した時点(2018年4月下旬)の情報になります。日本の航空会社と違い対応がバラバラの可能性が高いので利用する航空会社のサイト等を必ず確認することをお勧めします。
以下は荷物の制限に関するS7航空のサイトです(英語及びロシア語) www.s7.ru
LCCと言って良いのか悩ましい
ほとんどの格安航空会社では機内食は有料で事前予約が必要な場合が多いのですが、S7航空では、通常の航空会社同様、機内食が提供されますし、コーヒーやジュース等も持ってきてもらえます。ここが、S7航空をLCCとは言い難い理由です。
サービスも決して悪くなく、私は快適に過ごすことができました。また、客室乗務員も感じが良く、よく分からなかった入国審査時の書類についての質問にも親身に答えてもらえました(日本語は通じませんが)。
総じて前述の重量制限以外にはLCCらしさは見つけられませんでした。 ちなみに、S7航空は従来のロシアの格安航空会社のイメージを刷新すべく、頑張っているようです。
According to the world agency in March 2015 the airline performed 95.26% flights without deviations from the schedule. In accordance with the results of February 2015 S7 Airlines was the second airline in the world rating. “Punctuality of flights is one of the priority goals of S7 Airlines.”
世界的な機関によると、2015年3月にS7航空は95.26%のフライトをスケジュール通りに運航した。2015年2月の結果によって、S7航空は世界評価で二番目の時間厳守の航空会社であった。「フライトの時間厳守はS7航空の優先している目標の一つです」
S7航空のページ、2015年4月10日より引用、和訳
市内までのアクセス
私は予め、街までの配車を旅行会社にお願いしました。
公共交通機関が使えると便利なのですがウラジオストク到着が遅い時間だったので利用できませんでした。朝、昼に到着の場合は使ってみるのも面白いと思います。
気をつけておきたいのがタクシーです。空港について荷物を受け取るところにすでに客引きの人たちがいて、話しかけてきます。本能的に「この人怪しいな」と感じる場合は断って、空港の受付で行く先を告げて配車してもらうのが良さそうです。
ただ到着が遅い場合は受付に人がいなかったので手こずる可能性が高いと思われます。旅行慣れしていない人は早めの時間に到着する便を探すか、日本で送迎だけでも頼んでおくほうが賢明でしょう。
車だと所要時間は一時間半ほどで市街に入ります。
駅からのアクセス抜群!「ホテル・プリモーリエ」
「プリモーリエ」はウラジオストク駅からすぐ(徒歩10分しないぐらい)の場所にあるので、シベリア鉄道を利用する人にとってはとても便利だと思います。駅は街の中心部にあるので付近の観光に訪れた方も重宝するのではないでしょうか?
受付の人も感じが良くて好印象で、拙いロシア語で話しかけると「英語でも大丈夫ですよ」とほほえんでもらえました。
部屋の雰囲気はこぢんまりという感じですが、とても清潔感があります。部屋の明かりがかなり暖色なので、私は「旧ソ連的ノスタルジー」という印象を受けました。冷蔵庫と懐かしいブラウン管のテレビも備え付けてありました。バスタブもあるのでゆっくり休めました。
Wi-Fiも使えますが「LINE」などのアプリは使いにくくなります(これはロシア当局の制限によるものらしい)。
以下、対処法等がわかる記事です。参考にさせてもらいました。
意外とうれしいのは給水器(ウォーターサーバー)がエレベーターの横に設けられていることです。ロシアの部屋は秋から春にかけて強力な暖房がついているので喉がメチャクチャ渇きます。水を買う手間が省けるのでうれしい設備でした。
一つ気になる点としては、夜に怪しげな(意味深)電話がかかってくることがあったことです。旅行前に予約サイトの口コミを見ていると同じようなことが記されていたのでおそらく頻繁にこのようなことがあると思われます。
清潔感 | |
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接客 | |
観光への 利便性・立地 | |
設備の充実感 | |
シャワー の水圧 | |
【厳選】ウラジオストク観光スポット
ウラジオストクは大きな橋があったり坂が多いことから極東のサンフランシスコなんて言われたりします。なんだか横浜や神戸や長崎とも似ているような気がしました。港街の雰囲気は万国共通なのでしょうか? ウラジオストクの散策を楽しむための私からのアドバイスは「車にひかれるな!!!」です。横断歩道や信号機がほとんど設置されていないので地元の人たちはキョロキョロしながら一斉に渡ります。まさに「みんなで渡れば怖くない」状態です。
大きな交差点には地下道が通っているので慣れていない私たち観光客は遠回りしてでも地下道を利用した方が良いと思います。
レーニン像
ソビエト建国の父、レーニンは次の指導者であるスターリンとは違い今でも像や絵などが飾られています。ウラジオストクにあるこの像は駅の目の前にあり、「プリモーリエ」からは一番近く見逃せない場所の一つです。
ウラジオストク駅
ザ・街の中心である駅の周りは観光バスだらけ。ここからモスクワまで繋がっていると思うと感慨深いです。 駅にはモスクワまでの距離を示す柱が立っています。また、駅内部も見学できますが、入り口で手荷物検査があります。
※ちなみに「9288」と柱には書いてありますが、現在のモスクワまでの運行距離はルートが変わり9,259kmになりました。
潜水艦C-56博物館
私がウラジオストクで最も気に入った場所です。ちなみにキリル文字を使用していることから「シー56」では無くて「エス56」と読みます。
ウラジオストクはロシアの太平洋艦隊が置かれていることから海軍の街でもあるんです。街を歩いていると(本来の意味での)セーラー服を着た逞しい人とよくすれ違いました。
博物館に入るとまさに映画『眼下の敵』の世界が広がっています。館内はとても狭い上によじ登って進まなくてはならないところもあるので動きやすい服装で見学した方が良いでしょう。
ちなみに『眼下の敵』に登場する潜水艦はソ連軍ものではなくドイツ軍のUボートでした。
また、出口には小さなお土産屋があります。私はここでプーチン大統領のマグネットを購入。この後の旅でもたくさん目にしたので、至る所に売られていると思われます。お土産専門店にて、もっと安く売られていたのでショックでした...
余談ですが、最近面白いニュースが飛び込んできました。 www.news-postseven.com プーチン大統領には人を引きつける魅力がありますね。それも彼がKGBのエリートであった理由かもしれません。
今回は時間の都合上、行けませんでしたが道路を挟んだ海側には軍艦の博物館があります。
黄金橋を高台から見よう
ウラジオストクの最も美しい光景は高台から望む黄金橋(カタカナロシア語:ザラトーイ・モースト)だと思います。前述のとおりウラジオストクは坂だらけの街なので、登りは結構キツいです。そんなときはケーブルカーを利用してみてはどうでしょうか。
全く知らないと『下側の乗り場』はコンクリートのはがれ落ちた廃墟のように見えるので見つけるのに苦労しました。 ケーブルカーと言ってもあっという間に上の乗り場に到着します。
ケーブルカーを降りて、少し行くと景色が開けてきます。
この光景がウラジオストクが極東のサンフランシスコと呼ばれる由縁では無いでしょうか? ちなみに、もっと上に展望台がありますが、迷ってしまい行けませんでした。絶対に行くべきだと思うので皆さんはチャレンジしてみてください。
垣間見える明治・大正の日本の姿
ウラジオストクには右ハンドルの日本車がたくさん走っていたり、スーパーで日本製品がそのままの名前で販売されていたりします。これは日本とウラジオストクが距離的にも経済的にも近いことを示しています。
共産革命前の帝政ロシア時代、19世紀にウラジオストクは軍港として発展し、それに併せて極東ロシアの商業や貿易の中心地になりました。我々日本人もまた、新たな市場を開拓すべくウラジオストクに向かいました。 今もまだウラジオストクには当時に形成された日本人街の建造物が映画のセットのように残っています。この街を観光することによって近代国家としてはまだ青くも、たくましい古き明治・大正の日本の姿や日本人の開拓精神に触れる事ができるでしょう。
与謝野晶子の歌碑
街の中心から少し外れた坂の上にあり、結構歩きました。極東連邦大学の旧校舎の敷地内にあります。他の観光スポットよりメジャーではないようで私が訪れた時は日本人も含めて誰もいませんでした。
いざ、天の日は我がために 金の車をきしらせよ。颶風の羽は東より いざ、こころよく我を追へ。
黄泉の底まで、なきながら、頼む男を尋ねたる その昔にもえや劣る。女の恋のせつなさよ。
晶子や物に狂ふらん、燃ゆる我が火を抱きながら、天がけりゆく、西へ行く 巴里の君へ逢ひに行く。
さすが日本の浪漫主義を築き上げた詩人の一人です!
夫で女性問題抱えまくりのプレイボーイ、与謝野鉄幹を情熱的に愛しながらも憎む、まさに愛憎入り交じる情熱を感じます。
それを女性的でありながら当時からするとあまりにも進歩的すぎる文体で描ききっています。
晶子はシベリア鉄道を使って鉄幹いるヨーロッパに向かいます。私は彼女の旅路を辿ることがとても幸福に思えました。
【旅の食】ロシア料理店「ノスタルギーヤ(Ностальгия)」
初ロシア料理は観光客に人気のレストラン「ノスタルギーヤ」です。せっかくロシアに来たのだから伝統料理を食べに行きます。私はウラジオストクを発つ日にここを訪れたのですが、一週間まともな食事ができない場合に備えてしっかりめに食事しました。
ウラジオストク駅からまっすぐ200メートルほど直進して右手にあります。鉄道の待ち時間潰しに最適だと思います。
店内はとても落ち着いた雰囲気でうれしいことに日本語のメニューがあります。 私はロシア料理の定番ボルシチとクレープのサワークリーム添えを注文。
なぜかボルシチにはニンニク、唐辛子、黒パン、それに生ハムの脂身のようなものが添えてありました。
ちなみにロシアの人々はサワークリームが大好き。あらゆるものに添えてあります。
現地ですべきシベリア鉄道の準備
はるか9,000キロに及ぶ鉄道旅を快適に過ごすには、現地での準備も不可欠。具体的にどのような準備が必要なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
ウラジオストクのスーパー【シベリア鉄道の七日間の買い出し】
シベリア鉄道の旅にとってはマストアイテムにも関わらず、日本から持って行けないアレを購入しておきましょう。
そう、水です。
水は飛行機に持ち込むことができない上に、一週間分ともなると10リットル以上必要になるのでメチャクチャ重いです。
勿論、途中の売店や食堂車等で買うこともできますが、スーパーの方が大きなサイズが選べますから(あとちょっと安い)、ぜひ現地で買い出しに行きましょう。ウラジオストクのスーパーには『日本の天然水、富士山』みたいな水が沢山売られていますが、それらは比較的高いのでおすすめは『Bon Aqua』です。ロシアではメジャーな水ならしく、このラベルを貼ったペットボトルが沢山ポイ捨てされています(ロシアはポイ捨てが多い)。
ついでにお知らせしておくと、ロシアの水は各メーカー二種類(炭酸入り、炭酸なし)を販売していて、上で紹介した『Bon Aqua』の場合は水色がガスなし、青がガス入りです。
荷物の整理をしよう
シベリア鉄道の旅行中はスーツケースを座席の下に収納してしまうために、しょっちゅう荷物を取り出すことは難しいです。頻繁に使うものはサブバックに入れて分類しておきましょう。 私の場合、
- 貴重品は24時間つけておける前掛けのカバン
- 食料と水は大きな袋(IKEAのバッグみたいなもの)
- その他のもので鉄道利用時に必要なものはリュックサック
- 鉄道以外のロシア滞在で必要なものはスーツケース
と仕分けました。 座席には小物入れ等もありますが、そこまで収納力はないのでリュックサックに入れるものの中で中で特にに使う小物等をいれます。
私的ウラジオストク総評
ウラジオストクはロシア的要素2:アジア的要素5:ヨーロッパ的要素3の街だと思います。
見かけはヨーロッパですがやはりアジア感が強いです。少し物悲しくなるような排気ガスと砂埃、喧噪。ロシアという雰囲気も少なく感じます。
色々な面で「~風」。港街ということで、ロシアにとっても「異国情緒」あふれる街なのかもしれません。
古くから港と鉄道が交差する国際交易の要であるウラジオストク。
ロシア観光としてより、ウラジオストクそのものの観光として訪れるととても楽しめると思います。
次回予告
さぁ、ついにシベリア鉄道の登場です。
果たしてどんな街々が待っているのか?ロシアはどのくらい広いのか?アジアとヨーロッパの境を目撃することはできるのか?
お楽しみに!!!!!